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2023年8月17日

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根管治療のために歯科クリニックへ行くと、時によって初めから歯根端切除法、嚢胞摘出術などの外科的歯内療法を勧められることがあります。確かに専門医がプロトコル通り行えば、良い治療ですが、手術と聞くと、それだけで抵抗がある方も多いと思います。そこで今回は、外科的治療だけで歯内療法を行うことについて、掘り下げたいと思います。

確かに外科的歯内療法はメリットも多い治療方法です。

メリット
1. 感染源の除去:外科的手術では感染源を直接取り除くことができるため、特に複雑な感染がある場合に効果的であることがあります。
2. 素早い解決:感染や他の問題が深刻である場合、外科手術は素早く問題を解決することができる場合があります。
3. 再治療への適応:以前の非外科的治療が失敗した場合の再治療に対して選択肢となりえます。
4. 精密な診断:外科手術を行う際には、直接患歯を観察できるので、より詳細な診断が可能になります。
5. アクセスの容易さ:被せ物が外せない、外そうとすると歯を壊してしまいそう、もしくは外したくない、といった非外科的手法ではアクセスが困難なケースにおいて、外科的手法では治療が可能となる場合があります。
6. 高い成功率:トレーニングを受けた専門医が、モダンテクニック(マイクロスコープを使い、専用の超音波機器にて逆根管形成を行った上で、バイオセラミック系の材料にて逆根管充填する)を用いて施術すれば、約90%の成功率となることが複数の文献で示されています。

これらからすれば、この治療を最初から勧めるのもわからなくはありません。
また歯科クリニック側の経営という側面から考えると、外科のみで解決した方が有利に働きます。

しかしながら、外科的歯内療法のデメリットも多々あります。

デメリット
1. 侵襲性:体への侵襲が大きく、術後の痛みや腫れが非外科的歯内療法よりも強い可能性があります。
2. コスト:外科的歯内療法は非外科的歯内療法よりも費用が高くなることが多いです。(※外科的歯内療法は加入されている生命保険の会社や条件により治療費が保険金給付対象になる可能性はあります)
3. リスク:手術には感染リスク、神経損傷、隣接する歯へのダメージなどのリスクが伴います。
4. 治療の不完全性:外科的歯内療法のみを行った場合、根管内全てにアプローチできません。また、被せ物と自分の歯との境目が、歯茎のラインが変わることで見えてくることがあるなど、長期的な予後が不確定である場合があるため、最初の選択肢としては慎重に検討する必要があります。

以上を鑑みて私は、多くの場合の第一選択はあくまでも非外科的歯内療法であって、まずそれを行っても予後が悪い場合に外科的な歯内療法を行うべきと考えます。

では外科的歯内療法を第一選択にした方が良い場合とはどんなケースでしょうか。
1. 患者さん側の事情:通院する時間が限られている、被せ物を壊したくない等の患者さんの事情がある場合
2. 複雑な根管解剖学的形態:歯の根管が非常に複雑、もしくは石灰化により根管が極端に狭くなっていて、非外科的治療でのアクセスが困難な場合。
3. 外傷等による歯の損傷:歯が外傷等により亀裂や破折している場合、歯そのものの保存の可否を診断する必要性によりに外科的アプローチを行うことがあります。
4. 根尖に異物が詰まっている場合:根尖に異物が詰まり、非外科的な手法で取り除くことが困難な場合。
5. 歯の再発性感染:以前の外科的歯内療法後に再び感染した場合、非外科的手法での治療が困難であることが多くあります。
6. 非外科的手法のアクセス制限:既存の冠や被せ物などで非外科的アプローチが困難な場合。

これらの場合外科的歯内療法が最良の選択肢となることがありますが、最終的な治療方針は歯科医師との相談に基づいて決定されるべきです。

クリニックF&Tでは、海外研修を含め1000万円以上の費用と10年以上の年月を投じて習得した歯内療法の専門歯科医師が、正しく診査診断いたします。セカンドオピニオンも承ります。ご興味のある方はお問い合わせください。

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医療法人CFT クリニックF&T 院長 高見澤 哲矢 医療法人CFT
クリニックF&T
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院長 高見澤 哲矢

【経歴】
1993年 東北大学歯学部卒
1993年 高見沢歯科勤務
2003年 たかみさわ歯科オーラルヘルスケアセンター開院
2008年 クリニックF&Tとして移転開院

【所属学会】
アメリカ歯内療法学会(AAE)
日本歯内療法学会
東北歯内療法学会
Penn Endo Study Club in Japan
CID Club